2011年 12月 22日
冬至かぼちゃ |
紙漉きは冬の仕事。 氷のような水の中を何度も潜るうちに、素手はかじかんで
感覚がなくなってしまいます。
傍らのストーブの上でぐらぐら沸いている鍋の湯に手を入れながら、一晩中、紙を漉いていました。楽しかった。
独り暮らしの気ままにまかせ好きなことだけに夢中になっていたのです。
その日も朝から玄関の土間で紙を漉いていました。
「いたのかぁ」
ふと顔をあげると近所のおばさん。
「冬至かぼちゃ。煮たっけ、食ってみらっしぇ」
どんぶりにかぼちゃと小豆を煮たものが湯気を立てているのです。
ありがとうございます、ご馳走さまです。
おばさんはニコニコして帰っていきました。
「あ、いたいた」
いつも何かと声をかけてくれるおばさんが
「こんなの食うかと思ったが持ってきてみた」
大きな皿に山盛りのかぼちゃと小豆の煮たの。
ご馳走さま、いつもありがとうございます。
「休み休みやらっしぇよ」
おばさんは紙漉き場をちょっと眺めてから
帰っていきました。
「こんにちはぁ」
今度は珍しいひとでした。普段、会っても挨拶するぐらいのおばさん。
「あのぉ!煮てもよかったんだけど、口サ合うかわかんねぇから」
一口大に切ったかぼちゃがビニール袋一杯に詰められていました。
「好きな味にすっといいと思って」
ありがとうございます。煮てみます、ご馳走さまでした。
「気根、詰めてやりすぎっと体にさわっから、気ィつけてやらっしぇよ」
早口で言って、帰っていきました。
奥会津で最初に住んだ小さな村。
お世話になった家を離れ、初めて独りで迎える冬に
次々と冬至かぼちゃが届けられたのでした。
「上がってお茶でも飲んでってください」
そんなひとことも思いつかず
また独りの世界に没頭していた、なんにもわかってなかった私。
「あんまり食べてないと思って」
お弁当をつくって届けてくれたおねえさん。
「全部やってやっから心配すんな」
自分の育てた白菜と樽を持ち込んで大量の漬物を漬けていってくれたおじさん。
免許とりたての私の隣に乗り込んで
雪道運転の練習につきあってくれた兄ちゃん。
黙って屋根にのぼり、雪を下ろして
黙って帰っていったおじさん。
うう。みんな。ありがとうございました。
←カンジキを履いたとこ。どすこい!な足元だなあ。
毎朝、玄関前から隣りの家まで雪を踏みます。
裏の畑の隅っこに
印をつけた2mの棒を立てました。
50cm積もった朝から晴れて少しずつ締まり
今朝は40cmに。でもこれは嵐の前の静けさ。
この週末は大雪の予報です。
昨年の「クリスマス豪雪」が蘇る。
倒木、停電、通行止め。記録的な大雪でした。
今冬は雪のない土地から避難してこられた方が大勢。どんなにか心細いことでしょう。
どうかあまり降りすぎませんようにと祈ります。
一年で一番、日の短い冬至。
「明日からは米粒ひと粒ぶんずつ日が延びる」
冬至かぼちゃのあたたかな色。
お日さまみたいに
みんなの気持ちを励ましてくれますように。
by wildrose53
| 2011-12-22 19:42
| ヨメの休日