2011年 10月 09日
草の布、できました。 |
新しい布が、織り上がりました。
「からむし(学名:苧麻=ちょま)」という植物から採れた糸で織りました。
からむしとの出逢いは18年前。奥会津のちいさな美しい村で―。
くわしいなれそめはまたの機会といたしますが
このまっすぐな清々しく伸びた草が
それを手にとることの出来ない日々にも
私を慰め励まし、見守り続けていてくれた。
この布を織りながら、そのことがはっきりわかって、うれしくて。
からむしの茎から剥いだ皮に刃物をあて引き出した繊維:原麻=げんま(上)
原麻を爪で細く裂き、口で湿らせながら指先で繋ぎ、苧桶(おぼけ)に溜めていく(中)
繋いだ細い繊維を紡いで糸にする(下)
丸い桶はラオスで見つけた骨董品。中蓋・外蓋付き。漆に似た染色が施されている。用途も形も日本の東北の村とほぼ同じものに出逢い感激。
染めたからむしの糸。
写真より茶味の強いグレーとこげ茶は栗のイガで染めた。
薄いほうはみょうばん、濃い色は鉄媒染。
金茶は玉葱の皮で染め、媒染はみょうばん。
右は生成りのままの糸。
材料を煮出した液で糸を染める。媒染によって発色が変わり、色が定着する。
からむしの収穫から繊維を取り出すまでの作業は夏の仕事。
11月には初雪が降り、根雪となって年を越え、5月の連休前まで残雪の山々。
雪の前に染色も終えます。
そして深い雪に包まれながら作る糸。糸がたまったらやっと機(はた)に上げられます。
おぼつかない指から生まれてくれた見るからにぶきっちょな糸たちが
たくさん手元に残っていました。それに
母が送ってくれた誰かの糸や
お姉さんのような方からいただいた糸も混ざって
いつのだれのどこのからむし……みんないっしょになってしまったけれど。
染めは、夫とふたりで住んでいた家の台所で。
毎朝、今日は何が見つかるかな、と
染まる草や実を採集しに山へ行くのが愉しみでした。
カメラの調子がよくないので色が出ないのですが、実物の質感はこんな感じ。布が重なっているのがわかりますでしょうか?
からむしの布は軽く透けるのが身上。
触ると麻に似たしゃり感。
「越後上布」で知られるからむしの着物は「氷を纏ったよう」と言われます。但し、着尺の糸は繊細な極上の細い糸。
私の糸は太目なので野趣に富んだ風合い。
幅32センチ・長さ210センチの長い布。
ばあちゃんは「ふたつに切って暖簾にしたら」と言っていますが
さて。
しばらくこのまま眺めていましょう。
長い時間を経て
目の前に生まれてくれた布は
とても私らしい
大好きな姿でした。
からむし。ありがとうね。
待っていてくれて
ありがとうね。
「からむし(学名:苧麻=ちょま)」という植物から採れた糸で織りました。
からむしとの出逢いは18年前。奥会津のちいさな美しい村で―。
くわしいなれそめはまたの機会といたしますが
このまっすぐな清々しく伸びた草が
それを手にとることの出来ない日々にも
私を慰め励まし、見守り続けていてくれた。
この布を織りながら、そのことがはっきりわかって、うれしくて。
からむしの茎から剥いだ皮に刃物をあて引き出した繊維:原麻=げんま(上)
原麻を爪で細く裂き、口で湿らせながら指先で繋ぎ、苧桶(おぼけ)に溜めていく(中)
繋いだ細い繊維を紡いで糸にする(下)
丸い桶はラオスで見つけた骨董品。中蓋・外蓋付き。漆に似た染色が施されている。用途も形も日本の東北の村とほぼ同じものに出逢い感激。
染めたからむしの糸。
写真より茶味の強いグレーとこげ茶は栗のイガで染めた。
薄いほうはみょうばん、濃い色は鉄媒染。
金茶は玉葱の皮で染め、媒染はみょうばん。
右は生成りのままの糸。
材料を煮出した液で糸を染める。媒染によって発色が変わり、色が定着する。
からむしの収穫から繊維を取り出すまでの作業は夏の仕事。
11月には初雪が降り、根雪となって年を越え、5月の連休前まで残雪の山々。
雪の前に染色も終えます。
そして深い雪に包まれながら作る糸。糸がたまったらやっと機(はた)に上げられます。
おぼつかない指から生まれてくれた見るからにぶきっちょな糸たちが
たくさん手元に残っていました。それに
母が送ってくれた誰かの糸や
お姉さんのような方からいただいた糸も混ざって
いつのだれのどこのからむし……みんないっしょになってしまったけれど。
染めは、夫とふたりで住んでいた家の台所で。
毎朝、今日は何が見つかるかな、と
染まる草や実を採集しに山へ行くのが愉しみでした。
カメラの調子がよくないので色が出ないのですが、実物の質感はこんな感じ。布が重なっているのがわかりますでしょうか?
からむしの布は軽く透けるのが身上。
触ると麻に似たしゃり感。
「越後上布」で知られるからむしの着物は「氷を纏ったよう」と言われます。但し、着尺の糸は繊細な極上の細い糸。
私の糸は太目なので野趣に富んだ風合い。
幅32センチ・長さ210センチの長い布。
ばあちゃんは「ふたつに切って暖簾にしたら」と言っていますが
さて。
しばらくこのまま眺めていましょう。
長い時間を経て
目の前に生まれてくれた布は
とても私らしい
大好きな姿でした。
からむし。ありがとうね。
待っていてくれて
ありがとうね。
by wildrose53
| 2011-10-09 20:36
| 手の仕事